Weps うち明け話 文:清尾 淳

#435(通算#800)

今シーズンを振り返る⑤「予知能力」

 昨日の#434の最後の方に「山田直輝たち…」と書いたのが導火線になったわけではなく、直輝のことを少し書きたいと思っていた。

 #432でマルシオのことを「レッズをレッズに戻す選手」と書いたが、直輝も完全な状態に戻れば、レッズが優勝するために欠かせない選手であることは間違いない。
 それを感じたのは、Jリーグ最終節のC大阪戦。敗色濃くなった後半42分、原口のシュートがGKに(バーだったか?いま映像見られないので定かでない)弾かれて、浮いたボールに直輝がすかさず飛び込みジャンピングボレーで合わせた場面があった。
 今季、そういう場面で相手DFやGKよりレッズの選手が先に詰めて触った場面が何回あっただろうか? ホーム広島戦の原口のゴールや、ホーム柏戦の柏木の先制点などはリバウンドからの得点だったが、自分の前に来たものをしっかり決めたもので、そういうことを予期して、飛び込んだというのとは違うような気がする。

 この前節の鳥栖戦。0-1の状況で柏木のシュートがバーに当たり、0-2の状況で同じく柏木のシュートがGKに弾かれる、という場面があった。いずれも惜しいシュートだったが、もしも、このとき直輝が前線にいたら、と思う。
 山田直輝という選手は、どういう状況でもボールをコントロールしようとするし、どういう状況でも貪欲にゴールを狙う。
 ユース時代には、クロスに対して中央で合わせてゴールとか、ドリブルで相手をかわしてゴール、というイメージがあまりなく、そこから出てくるか! そこから打つか! というゴールが多かったように思う。
 だから味方のシュートに対しても、常に「こぼれるかも」という意識を持っている。狙うのは自分だけではないのだから、跳ね返った、じゃあ行かないと、では遅いのだ。オフに入ってしまったので質問していないが、C大阪戦のプレーは、原口のシュートが跳ね返ることを半ば想定していないと、あのタイミングでは飛び込めないような気がする。

 もちろん、そういう場面では直輝以外の選手にも狙っていて欲しいが、直輝の場合は中盤でも自陣でも、常に次とその次の展開を予期してプレーしている。そうなったときに、ここに味方がいると良いな、というところにいるのだ。
 これは前にもどこかで書いたかもしれないが、啓太がかつて「水を運ぶ選手」と言われたが、直輝もその修飾語が当てはまるし、直輝の場合はバケツで運ぶのでなく、ペットボトルのフタを外して相手に手渡すかのようなイメージがある(痒いところに手が届く、と言えばいいのか)。
 当然、運動量も多くなるし、相手とのせめぎ合いのゾーンに入っていくことも多くなる。C大阪戦の追加タイム、エリア内でジャンプしてボールを受けた原口が後ろから倒され(あれ、ファウルだろ! というのはおいといて)、浮いたボールに足から突っ込み、C大阪の山下と交錯したシーンでは、心の中で「行くな!」と叫んでしまった。見る者にとっては、どうしてもケガのことが頭から離れない。

 しかし当の直輝は「それがなくなったら僕じゃないし」と言う。
 直輝の、あの予知能力のようなサッカーセンスと、それを遂行する技術は、Jリーグでも一、二を争うものだと思う。それをケガなく発揮できるような身体を作って欲しいし、さらにケガなくそういうプレーを完遂できるように、さらに技術を磨いて欲しい。
 直輝がシーズン通してプレーするレッズは、絶対に強いと思うし、もっと面白くなるはずだ。

(2013年12月26日)

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