Weps うち明け話 文:清尾 淳

#832

続けて見ているからこその不満


 前回の#831と同じテーマ。続けて試合を見ている者ならでは、という感覚を30日(土)と31日(日)に味わった。

 30日のJリーグ大宮戦。前半の14分に、那須が高い位置まで持ち上がって縦パスを送り、それを受けようと走りこんだ宇賀神がエリア内で大宮の菊地に跳ね飛ばされたシーンがあった。
 記者席からだとファウルのように見えたが、吉田寿光主審の笛は鳴らなかった。
 ファウルでなくてもおかしくはないのだが、いまひとつ釈然としないのは、1週間前のF東京戦が頭に残っていたからだ。
 前半23分、エリア内に上げられたボールを森脇と東京の河野が競り合い、森脇が河野を倒したとして、岡部拓人主審がPKの判定を下したシーンだ。
 あれがPKで、どうしてこれがPKじゃないんだよ!と。
 試合が違う、主審が違う、状況も少し違う。一緒にして文句を言うのは筋違いだということは重々わかっていても、毎回試合を見ている者にとっては、やはり一つの流れでとらえてしまうのだ。きっと、サポーターの中にも「先週はPKだったぞ!」「岡部なら取ってるぞ!」と叫んだ人がいたのではないか。

 翌31日は、なでしこリーグエキサイティングシリーズ上位リーグ第1節(長い!)の浦和レッズレディース対INAC神戸レオネッサ戦。レッズレディースが2-1でリードして迎えた後半アディショナルタイム。I神戸のパスがエリア内でレッズの岸川の手に当たり、ハンドでPKの判定。これを決められ、レッズレディースは初戦をドロー。勝点3を取れなかった。
 引き上げる主審に対して駒場のスタンドから、なでしこリーグでは非常に珍しい、大きなブーイングが起こった。
 記者席からはハンドの場面がよく見えなかったが、岸川の手に当たったことは間違いないのだろう。それをハンドと判定されても仕方がない。だが、この日駒場に来場した多くのレッズファンの脳裏には、2週間前の試合が刻み込まれていたに違いない。

 8月17日(日)17時、浦和駒場スタジアム。なでしこリーグレギュラーシリーズ最終節、浦和レッズレディース対INAC神戸レオネッサ戦。日こそ違うが、キックオフ時刻も会場も、顔合わせも同じだった。レッズが押しながら0-0で迎えた前半37分、レッズのチャンスにI神戸のGK海堀がエリアを飛び出し、後藤のシュートを手に当てて防いだ。完全にハンド。海堀は反スポーツ行為で警告か、得点機会阻止で退場となる場面だ。しかし主審は「セーフ」のゼスチャー。見えていなかったのなら仕方がないが、「セーフ」ということは海堀の手に当たったのは見えていたのだろう。それでハンドでないのだから驚いた。

 選手の手にボールが当たってもハンドを取らないことは多い。だが、わずか2週間前の同じ対戦カードで、I神戸はハンドを取られず、レッズレディースはハンドを取られた。もし、これが逆だったら、レッズレディースは今ごろレギュラーシリーズ1位の勝点6と、エキサイティングシリーズ初戦勝利を合わせて勝点9でトップに立っていたはずだ。それが頭にあるから、腹立たしいのは当然だろう。

 4つの試合は、それぞれ1試合単独で考えれば、「それもサッカー、仕方ない」で済ませられるかもしれない。だが続けて見ているからこそ、感じてしまう判定への不満というのもある、と思った2日間だった。
EXTRA
 去年の4月3日(水)、埼スタでのACL全北現代戦。主審は、試合が細切れになるほどファウルをよく取った。あるとき、ゴール裏から「家本なら流してるぞ!」という声が飛んで、笑ってしまった。その4日前の3月30日(土)、アウェイでのJリーグ新潟戦の主審は家本政明氏だったが、その試合ではフィジカルコンタクトによるファウルかと思われるシーンも流されることが多かった。そのことを言っていたのだ。大会も違い、相手も韓国チーム、主審は外国人。同じ基準でやれ、というのは無理がある。いや声が届いても日本語はわかるまい。でも、ジョークとしては秀逸だった。

(2014年9月3日)

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