Weps うち明け話 文:清尾 淳

#835

あれから半年


 9月23日(火)で、無観客試合からちょうど半年が経った。
 というのは、まったくの偶然だ。何を今さら、ということを書くときに、何か良いタイミングはないかと見回したら、書き出しには絶好の符合があった。
 でも、何度も書こう書こうと思いながら、スタートできず、本当に書き始めてから気がついたのだから、これはやはり何かの力が働いていたのかもしれない(今は23日12時半。デンカビッグスワンスタジアムのプレスルームだ)。

 レッズの応援が昨年までと――、正確には今季の第2節までと、――大きく違っている状態が、この半年間続いている。
 3月8日(土)に起きた差別的横断幕事件が発端となってこうなっていると誰もが知っているが、なぜ今もいろんなことが元に戻らないのか疑問を通り越して不満に思っている人が多いはずだ。

「人種、民族、国籍、言語、性別、宗教、出自などによる差別がいけないのはわかっている。もう二度と同じ間違いを犯さないとサポーターは思っているのに、なぜいつまでもダンマクやゲーフラが禁止されているのか。これは、クラブによるサポーターへの“罰”なのか」
「掲示物の禁止は、万が一の再発防止だとしても、応援をリードする太鼓がいつまでも認められないのはなぜか。そのために、応援がまとまらなかったり、ずれたりしてチームの力になっていない」

 ほかにも、いっぱい意見を見聞きしているが、この2つについては、多くのサポーターに共通する不満なのではないか。そして、いろいろな思いは最終的に次の一つのことに集約される。

「いつになったら、あのレッズらしい応援が戻るのか」

 #833「復活への誓い」で紹介した近藤篤氏の写真(相変わらず見せられないが)。あの情景は、8年ぶりの優勝に向かって突き進んでいる今の浦和レッズにこそふさわしいはずだ。
 9月20日のMDP459号の「Reds-fool live」に「だが残念ながら、レッズサポーターが本来持っている結束の力、そしてピッチに立つ者を畏怖させるスタンドの風景は、以前のものには戻っていない」と書いた。
 もしかしたら、現在この順位にいるということは、今のスタジアムのままでも、チームはリーグ優勝できるかもしれない。だが、優勝争いの終盤は今よりもっと大きな力が必要になってくることは、過去の経験でわかっている。そして毎回全力を尽くして戦っているチームに、今以上の力を出させるもの、あるいは相手チームの戦意を削ぎ、萎えさせるもの。それは日本中どこを探してもない、あのレッズサポーターの応援であることは間違いない。
 そしてもっと言えば、サポーターにとってリーグ優勝というのは、そのシーズンの闘いの集大成というだけではなく、それまで数年の闘いの成果でもあるのだ。ミシャのサッカーということでは3年間の積み上げの結果が試されているのだが、長年レッズと共に闘ってきたサポーターにとっては、より長い歴史――、短く勘定しても07年からの7年間、――の上に今年がある。これまで一緒に苦労してきた多くの仲間たちと共に、その瞬間を迎えなくていいのか。 
 そういう思いが、試合ごとに強くなっていく最近だ。

 第25節を終えて今季二度目の4連勝となった。2位との勝点差は6。優勝に向けて残り9試合というのは、決して少なくはない。だがスタジアムがレッズらしさを取り戻すための期間としては少ないくらいだ。残りのホームゲームは4試合しかないのだ。
 かつての最盛期のスタンドに戻ることは、残念ながら今季中には難しいかもしれない。だが今季のうちに、そこへ向けて歩き出していることを、いま来ているサポーターみんなが確信して最終節を迎えることは、絶対に必要だと思う。

 新潟戦の試合前から書き始めて、今は帰りの新幹線の中。まだ起承転結の「起」の部分だが、長くなるので一度終わる。 

(2014年9月24日)

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