Weps うち明け話 文:清尾 淳

#859

16日間の準備

 16日間にわたる二次キャンプが終わった。来週の今ごろはソウルからスウォンに向かっていることだろう。
 やはり出張先だと、ふだんやらないことをしなくてはいけなかったり、ふだん簡単にできることができなかったりして、仕事の能率は良くない。MDPの開幕号が2週間後に出ると思うと、少し焦りを覚えながら鹿児島空港のラウンジで書いている(ここが一番、仕事が進みそうだ)。

 キャンプ中、選手といろいろな話をした。レッズの有料公式サイト「サイトメンバーズ」のコメント取りを手伝ったこともあるが、それ以外は取材というより会話だった。誰との会話ということでなく、キャンプを通じていろんな選手と話した中で考えたことがある。

 この16日間のキャンプをやり抜いたことで、今季はシーズン終了まで勝ちきる保障ができたのか。
 と言われれば、そんな保障はどこにもない、と答えるしかない。いや、そもそもそんな保障が可能なのか。

 宇宙ロケットの打ち上げであれば、何km上昇したところで三段目を切り離し、どこどこで二段目を切り離し、どの辺で静止軌道に乗せ…というふうに、綿密なプログラムが必要だろうし、万が一のアクシデントにも対応できるような補助プログラムも用意されているだろう。
 だがサッカーの試合は事前のプログラムどおりにいくとは限らないし、ましてや8か月後、9か月後にどうなっているかを予測するのは困難だし、起こりうる全てのことを想定して対応策を今から練っておくのはナンセンスだ。

 逆に言うと簡単なこともある。
 状況がどうなっていようと、行われるのはサッカーなのだから、サッカーの試合に勝つ準備をしておけばいい。第2ステージはボールが大きくなって、チャンピオンシップはピッチが広くなる、ということはない。またチェルシーやバルセロナやバイエルン・ミュンヘンを相手に優勝しようというのでもない。
 G大阪を始めとするJ1リーグの各チームに、サッカーで勝つ準備をすればいいのだ。
 それに加えて、ACLでアジアの強豪にも勝つこと。中2日、中3日の連戦でも勝つこと。シーズンが進んで選手に疲労が溜まってきたり、ケガ人が出たり、出場停止選手が出たり、という状況になっても勝つこと。
 その準備を今の時期にできる限りしておいたということだ。
 そのために中2日の試合を5試合続けたり、メンバーを固定せず入れ替えて試合に臨んだり、試合と試合の間の練習では細かい動きについて繰り返しやってきた。そもそも昨季J1でレギュラー的に出場していた選手を6人移籍で獲得したというのは、その前提になる。

 それでも保障にはならない。試合で90分戦うことと勝つことは違う。それは誰にも保証できない。
 だが選手の自信にはなったはずだ。特に連戦を戦い抜く体力を付けること、連戦への対応を身体で覚えることについては、かなり前進したと思う。その自信が、公式戦で勝つことで、少しずつ大きくなっていく。

 シーズンが終わったとき、良い結果が出れば「あの16日間のハードなキャンプの成果だ」と言ってもいいだろう。だが選手たちは今そんなことを想定してはいまい。
 ハードなキャンプに取り組み、毎日を一生懸命過ごした。この時期はそれしかできないのだし、今はそれで十分だ。

 シーズンの準備はいったん置き、明後日からは25日のスウォン戦に勝つための準備が始まる。
 久しぶりの大原だ。

(2015年2月18日)

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