Weps うち明け話 文:清尾 淳

#914

モード

 よく知っている人でも、思わぬところで会ったり、いつもと違う服装だったりすると、すぐには誰かわからないことがある。
 昨日(1月30日)、あるショップで品物を選んでいると、レジに並んでいる男性がこっちを見ていた。そのときの僕の反応。

(あれ?こっち見てるな)
(知ってる顔だ)
(誰だっけ?)
(あ、武藤雄樹だ)
(ウソ!何でここにいる!)
(まさか、ケガでキャンプから外れたのか!)
(あ、昨日帰ってきて、今日オフか)

 以上、7つの心理状態が移り変わるまで2秒はかからなかったと思うが、1秒は過ぎていたと思う。6番目のときは本当に血の気が一瞬引いた気がした。
 還暦を前にして、脳内電流のスピードが遅くなっていることも背景にあると思うが、このところ曜日や日付の感覚が薄まり、「レッズは沖縄でキャンプ中」という意識だけが強くなっていたから、武藤雄樹の顔を忘れるはずはないが、「今ここにいないはずの人」という意識が先に働いて(誰だっけ?)という思いが一瞬生まれた。さすがに、すぐ武藤だと気がついたがそこで日付に思い当たらず、(キャンプにいるはずの選手が浦和にいるというのは、大きなケガでもして帰ってきたのか)という余計な心配をしてしまった。
 まだ頭がシーズンインしていないのだな、とつくづく思った。まあ、最近は一次キャンプには行かず、開幕の準備や、シーズン中はなかなかできないことを、余裕を持ってさせてもらっているので、この時間は大事にしたい。

 それもあと2日。僕は二次キャンプには1日遅れの2月2日から入る。僕自身、沖縄でのキャンプに行くのは初めてで、毎年行っていた指宿とは違い、慣れるのに時間がかかるかもしれないが、逆に指宿よりも便利なところもあるだろう。プラスマイナスして、浦和にいるときの半分くらいのスピードで物事をこなしていければ十分だ、と覚悟している。
 ただし、練習をしている選手たちやミシャの顔を見れば一気にシーズンモードになるだろう。それが25年間で培われた僕の特性だ。武藤は私服だったので、僕のスイッチを入れるまでには至らなかったが、キャンプが終わったのを思い出させ、ホームページでミシャのコメントを読むきっかけを与えてくれた。
「いろいろな組み合わせを考え、いい2チームを作りながら戦術をしっかり準備していきたい」という監督の意気込みを読んで、二次キャンプが楽しみになった。沖縄での10日間の生活の心配よりも、今はそっちが大きい。

 二次キャンプが終わると、さいたまシティカップがあり、Talking REDS 2017があり、スーパーカップがあり、ACLシドニー戦があり、Jリーグ開幕(横浜FM)戦があり、ACLソウル戦があり…と、超多忙な2週間になる。3月の初旬はもっと忙しくなる。沖縄では、それらの準備もしなくてはいけないが、スケジュールに追われることはないので、この時期でないと発想できないこと、書く余裕がないことなどを少しは書けたら、と思う。

 MDP私史もまだ途中(というより始まったばかり)なのだが。

(2017年1月31日)

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