1. TOP
  2. Weps うち明け話

Weps うち明け話 #1023

再開は見えないが、再開したら(2020年4月23日)

 

 4月20日(月)のテレビ記者会見は武藤雄樹だった。

 

 まだ全選手がひととおり会見に出たわけではないのに、武藤は2度目の登場。それは、本日行われた「STAY HOME企画 選手とお昼トーク!」に参加する3人の1人が武藤だったかららしい。そのイベントがどうなったのかわからないが、新しい試みとして今後も改善しながら継続していくのだろう。

 

 また、長澤和輝の提唱で医療関係者への感謝をウェブ上で表明する活動も始まり、広がりを見せているようだ。本来の仕事であるサッカーができないとき、社会のために何ができるか。一人で考えていても良いアイデアは浮かばないかもしれないが、みんなで知恵を出し合えば何か出てくる。いや、そもそも何かやりたい、という気持ちも複数で話し合うことによって湧いてくるものかもしれない。

 いわゆるブレーンストーミング自体を、インターネットを使ってやらなければならない状況だが、そのシステムはコロナ禍が収まっても有用なものだと思う。チームはウェブ合同練習をやっているそうで、どんなものだか今度詳しく聞いてみたいものだ。

 

 武藤が前回、記者会見に出てくれたのは3月16日(月)。そのときは、4月3日(金)のJリーグ再開を目指しているときだった。最初の「3月18日(水)再開」から、再度の延期が決まった後だったが、まだそういう望みを持っていておかしくない時期だった。

 そこから「大型連休明けの再開」へ再々延期が発表され、現在は6月以降という、言わば無期延期の状態だ。目指すものが見えていた1か月前と今とでは選手たちの心構えが相当違っているはずで、そこを質問した。

 

 質問:3月16日にテレビ電話会見をした後、1か月経って状況が変わっているが、再開に向けての心境や社会の状況に関しての心境に変化はある?

 

 武藤:前回のときは、そのうち新型コロナウイルスも終息してJリーグが再開するんじゃないかと思っていた。僕が簡単に考えていたのかもしれないが、思ったよりも大変な状況、みんなにとってつらい状況になってしまった。正直、今は再開については考えづらいのかなと思う。Jリーグというよりはまずみんなが健康を大事にしていかないといけないし、今は再開に向けて何か、という感じではないので、難しい状況だと思う。

 

 この空白期間は、ケガによるリハビリなどとはまるで違う。時期のメドがなく、しかも練習自体も通常とは全く違うのだから、モチベーションや体力、スキルを維持していくのは困難なことだろう。

 だが、その後の質疑応答で、そんな中でも懸命に努力していることが伝わってきたので、少しホッとしたところだ。

 そこで、もう一つ。「#1021」で書いたように、再開されたとしても、スタンドの様子や応援がこれまでとは一変した状態になることも考えられる。仮定の話になるが、それは選手としてどう感じているか質問した。

 

 質問:再開しても観客席の前後左右を空ける、そのために全て指定席にする、アウェイチームのファン・サポーターは入れないなど、いろんな情報があるが、そういう中でプレーするとどうなるのか想像したことはある?

 

 武藤:選手はたくさんの人に見てもらっている中でプレーしたいと思っているし、当たり前だが今までのように埼スタが真っ赤に埋め尽くされた中でプレーしたいと思っている。しかし安全面などを考えて、お客さんが50パーセントになることなど、仕方ない部分はあると思う。それでもしっかりプレーできる姿を見せられる方がいいと思う。僕は無観客試合を経験したことはないので、どういった気持ちになるかは分からないが、何十パーセントかでもお客さんが入ってくれた中で何かを見せられる方が、選手としてのモチベーションは高まると思う。

 

 席の前後左右を1席ずつあけても2mにはならないから、50パーセントでは済まないかもしれないが、たしかに何割かでも人がいるスタンドと無観客とは、全く違う。

 まだ再開の時期も決まっていないのに気が早いが、こう思う。

 

 2万人の埼スタというのは最近珍しくなくなってしまったが、ゴール裏も含めて人が均等に散らばっているところは見たことがないはず。決して熱い試合になりやすい状況ではない。だけど、選手たちは感じてくれるだろう。2万人のバックには、埼スタに来たくても来られなかった何万人ものファン・サポーターがいることを。そして自分がこれまで感じた最多の埼スタを思い出しながら、そのときの気持ちでプレーしてくれるだろう。

 

 今までは、チームや選手の状況をファン・サポーターに伝えることが主な仕事だった。だが、再開後は多くのレッズファン・サポーターが後押しする気持ちをいかにストレートに選手たちに伝えるかも大事な仕事になってくるような気がする。

 

 そういう準備もしておこうと思う。

 

(文:清尾 淳)