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Weps うち明け話 #1034

通算11試合目(2020年7月2日)

 

 1,254試合。

 1992年9月5日のJリーグカップ市原戦以来、浦和レッズの公式戦で僕がスタジアムにいた試合の数だ。レッズの公式戦通算試合数が、今年のJリーグ湘南戦までで1,264試合。他の仕事と兼務していて行けなかったことが3試合、病気で行けなかったのが7試合あるから計10試合だけは行っていないのだ。最後にテレビ観戦したのが1995年4月12日の横浜マリノス戦だった。病院を夜に退院し、家に帰ってテレビをつけたらウーベ・バインがVゴールを決めるところで、延長になっていなかったら見られなかった。

 それ以外は、全部スタジアムで見た。記者席だったりピッチのカメラマンエリアだったり、ときには一般席だったりしたが、とにかく現場で試合を見た。

 

 列車の乗り遅れや車の渋滞で遅刻した試合もある。

 スタンドに入ったらすぐに点を入れられた雨の鹿島戦。ゴール裏に座ってカメラを構えたら違和感いっぱいで、よく見たらエンドが逆だった天皇杯FC東京戦。ロケットマンが見られず、ラジオの実況を聴きながら第三京浜を車で走っていた横浜FMとの開幕戦。

 試合が終わってすぐに出た試合はあるが、終了のホイッスルを聞かなかったことはない。劣勢で時間が迫り、負けを覚悟してスタンドから人が引いていくのを見て「まだ、わかんないぞ!」と心の中で叫んでいたことも(よく)あったっけ。

 年間勝点1位になった2016年のリーグ最終節は、笛が鳴り最終順位を確認するや否や記者席からダッシュで帰り、大宮から北陸新幹線に乗った。ホーム最終節のセレモニーを見なかったのは、よりによってこの年だけだ。後ろ髪(ないけど)を引かれたが、高校の還暦同窓会は欠席したくなかった。

 

 1,254試合の全てを克明に覚えている…、などと言ったら大ウソだ。特に最近は古い知人の名前もなかなか出てこなくなったほど記憶力が低下している。しかし自分の撮った写真、書いた記事などを見ればかなり思い出す。ゲーム内容よりスタンドやスタジアム外での出来事の方が鮮明に残っている試合もある。

 この数を威張る気持ちはさらさらない。僕より行っているサポーターはいるかもしれないし、何より僕は試合に行くのが仕事なのだ。

「行けない試合はあるが、行かない試合はない」と語るサポーターや、仕事もやりくりしたがチケットがないというサポーター、他にも受験や出産、そして家庭の事情や体調不良などで行くのを断念したサポーターには何人も会ってきた。そんな彼らが「行ける試合は全部行く」のと、僕が「レッズの公式戦は99パーセント行っている」のとでは価値が違う。比べることすらできないと思う。

 

 だが最近「清尾さんが一番レッズの試合に行ってるでしょ」と言われるようになって、自分のことだからではなく、公式戦にこれだけ行った人間がいる、というのは一つのレッズらしい記録かな、と考えるようになった。だから今後仕事を離れることはあっても、試合には行こうと思っている。いつまで財布が許すかわからないが、サポーターがしてきた苦労を遅ればせながら自分もしよう、と。

 ちなみに他にたくさん行っている心当たりは、レッズの土田尚史さんと水上裕文さんだ。数は聞いたことがないが。

 

 だが7月4日(土)の横浜FM戦は、現場にいない。

 Jリーグが設定した記者の総数は各会場25人。6月13日に発表された取材要項を見て、優先順位を考えればおそらく自分までは回ってこないだろう、と思っていた。

 常々思っているのだが「メディア」とひとくくりに言っても、僕はマスメディアではない。日本全国の人に届ける媒体を作っているわけではなく、非常に多いとは言え浦和レッズのファンサポーターという一部の層の、さらにその中のマッチデー・プログラムという媒体を読んでくれる人のために取材しているのだ。そこから得た経験や情報を、こうやってMDP以外の媒体で発信することもあるが、それは副産物だ。

 ワールドカップなど多くの取材希望がある大会では、やはり申請を出しても許可されない人が多い(僕は申請したことがないが)。それと同様に、優先順位をつけざるを得ない場合は、かなり下方に位置するだろうし、1媒体1人ではなく1社1人という規定もあるから、レッズのホームゲームだからと言ってオフィシャル媒体の記者が何人も入れるわけではない。覚悟はしていたし、昨日「申し訳ないが入れられない」と連絡を受けた。

 

 ふだんでも記者席が人で溢れかえるような小さなスタジアムもワールドカップをやった大きなスタジアムも同じ25人というのはおかしくないか、とは思う。しかし記者席のキャパシティだけではなく、通路の問題もあるし、条件が違う個々のクラブに任せて、万一問題が起きたら大変なことになる。「#1033」でも書いたが、大規模イベントを実施する先陣団体としての責任は重い。Jリーグとしては少ない方に合わせて一律でスタートするしかないのだろう。第4節以降は状況によって制限に変更があるかもしれないが、いまは、土曜日が「現場にいない通算11試合目」となることに納得している。

 

 こんなときには周作イズム!

 どんなに苦しい状況の中でも、ポジティブ思考を忘れない西川周作に学んで、何かポジティブなことを見つけよう。良い選手がそばにいるなあ。

・今度のことがなければ、自分がこれまでレッズの試合にどれだけ行ったのか数えなかったし、それを自覚することもなかっただろう。

・テレビで試合を「取材」するのは、先日の町田との練習試合でやってみたが、なかなか難しい。しかし、そういう手法も身につけるきっかけにしよう。

・これまでも「試合に行けない」サポーターの気持ちがわかっているつもりでいたが、今回さらに深く共感できた気がする。

・1995年4月15日のJリーグ第9節・柏戦(大宮サッカー場)以来続いていた「レッズ戦連続現場立ち合い記録」はちょうど1,200試合で途切れるが、次の再スタートから、新たな連続記録を目指して…、更新するのは何歳になるんだ?

 

(文:清尾 淳)