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Weps うち明け話 #1106
天皇杯だから(2021年10月28日)
さすがにリーグ戦で前半あれだけチャンスを作られたのだから、G大阪はかなり前線からプレスを掛けてきた。パトリックが先発したのも11日前とは違う。
浦和レッズが10月2日(土)に対戦した神戸は、ビルドアップの舵取りをするボランチのところを中心に狙ってきた。10日(日)のC大阪は、バイタルエリアでフィニッシュに向かう二列目の選手を狙ってきた感じだった。
もしもその2試合の結果が違っていれば、今ごろはリーグ3位を死守するという立場だったし、ルヴァンカップ決勝を2日後に控えて緊張していただろう。
大きなものを失った敗戦だったが、そこから得たものもあった。
自陣を固めてきた16日(土)のG大阪からは、なかなかゴールを奪えなかったが、22日(金)の柏のように最終ラインにプレスを掛けてくる相手に対しては、しっかりかわしてボールを前に運ぶことができた。
昨日のG大阪も同様だった。相手が最終ラインの近くに何人もいる中でボールを保持するのは緊張感があるが、それほどプレスが徹底していたわけでもなかったから、ビルドアップのスイッチが入ってしまえば良い形が作れるはず。そう思って試合を見ていた。
そして後半、試合を締めにかかる時間帯になってからは、攻撃の構えを崩さず中盤でボールを保持するという今のレッズが得意な形でゲームを運ぶことができた。安心はできなかったが、ボールを奪われる気はあまりしなかった。
この試合でも“ピッチのガードマン”柴戸海が大活躍だった。
柏戦で、相手のチャンスになりかけた場面や、味方のボールが奪われた直後、その局面に顔を出してチームを救っていたが、G大阪戦でも29番のフォローがなければピンチになっていたシーンは少なくなかった。
3年計画の中でクラブがチームコンセプトと掲げている一つに「即時奪回」があり、それはチーム全体に浸透しているが、中でも柴戸がそういう場面にいることは多い。ポジション的に当然かもしれないが、「即時奪回の権化」と呼びたいくらいだ。
そしてGKの西川のセーブも光った。特に後半、3点目が取れない中で、もし1点でも返されれば流れがG大阪に行く可能性が高い。
57分、パトリックがシュートした場面は、宇佐美の進入をDF陣が止めた直後だけに危なかったが、西川の左足がすかさず出た。勝敗を分けたかもしれないビッグセーブだった。
前回のコラムで期待を書いた大久保は、投入されたときに3-0とか4-0になっていれば、もっと思いきりゴールを狙いに行っただろうが、時間帯から言って無失点が優先順位の一番だったから、仕方がない。リーグ戦ならば得失点差の改善も頭に入れなければいけないが、昨日は天皇杯だから。
天皇杯だから。
そう。それは、試合の前にも思ったことだ。現地の人から送ってもらったスタジアムの写真、テレビに映ったスタンド。
天皇杯でなければ、パナスタのあれだけ多くの部分を真っ赤に染めることはできなかっただろう。
だが天皇杯であっても、レッズサポーターでなければ、そういう発想も行動も生まれない。
試合後の取材で西川も、赤く染まったスタンドや多くのサポーターの存在を見て「ウォーミングアップのときに鳥肌が立っていた」「感謝の気持ちでいっぱい」と語っていた。
今季、アウェイでの公式戦は11勝6分け8敗と、ホームに比べてだいぶ分が悪い。
天皇杯準々決勝は、相手のホームであるパナスタをアウェイにしなかった、いや、コロナ前のアウェイの雰囲気に近付けた、レッズサポーターの勝利だと言っていい。
(文:清尾 淳)