1. TOP
  2. Weps うち明け話

Weps うち明け話 #1222

決起集会・その1(2024年2月13日)

 

 長くなったので2回に分けました。

 

 埼スタに6万人以上が入った浦和レッズの試合は数えるほどだが、5万人以上となるとかなりの回数になる。その満員に近いスタジアムで試合が始まるとき、レッズが得点したとき、勝利のホイッスルが鳴り響いたときのスタンドは、どんな演出家とエキストラがいても創り出すことのできない、オンリーワンの光景だ。特に勝利の瞬間は。

 

 先日、招待券を得て国立にスーパーカップを見に行ったレッズサポーターが「久しぶりに思い入れのないチーム同士の試合を見たけど、サッカーって案外退屈なスポーツだ」と言って笑っていたが、サッカーやレッズに興味のない人を引き込んでしまうのが、「5万人以上が入った埼スタで浦和レッズが勝利した瞬間のスタンド」だと思う。

 

 その頻度が最近は低いので困りものなのだが、それはともかく、ファン・サポーターはそれに満足して、余韻に浸りながら家に帰る。

 だが、クラブのスタッフは“祭りのあと”で、考えるべきことがある。

 どれだけ多くのホームタウンの人たちが今日の勝利を喜んでくれたのか、と。

 

 さいたま市の人口は約135万人。そのうち旧浦和市(浦和区、桜区、緑区、南区)だけでも約60万人、埼スタのキャパの約10倍だ。60万人が1年に1度でも試合を見に来てくれるようなら万々歳だが、そこまでは言わない。

 さいたま市民の多くが、とりわけ旧浦和市に住む人たちのほとんどが、浦和レッズを気にしてくれること。それがここをホームタウンにするサッカークラブの存在価値であり、役割であり、あるべき姿だと思う。

 

 段階をつけることではないので「頂点」とは言わない。シーズンチケットを持って毎試合スタジアムに来てくれる人を「終点」とすれば、たまにチケットを買ってきてくれる人、試合には来ないがDAZNでほぼ毎試合見る人、NHK-BSやテレ玉で放送があるときは見る人、何か一つでもグッズを部屋に置いたり身に着けたりしている人、ネットで結果だけはチェックする人、チェックまではしないがレッズが勝ったと聞いて喜んでくれる人

 さまざまな形でレッズを気にしてくれる人が街に溢れている。そんな状態でレッズが勝利すれば、あるいはタイトルを獲れば、今よりもっと多くの人たちを幸せな気分にすることができるだろう。

 

 Jリーグができた1993年当時、浦和レッズの名前を知らない人は浦和にほとんどいなかった。それほどのJリーグブームだった。そして残念ながら「とても弱い」ことも含めてだが、多くの人が成績を気にしていたと思う。

 駒場競技場がまだ収容1万人だったころ、試合が終わって浦和駅や北浦和駅に来たサポーターが、電車から降りた人に「今日レッズ勝ちましたか?」と聞かれるのは普通のことだった。モバイルサイトどころか携帯電話そのものが普及していなかった時代だからかもしれないが。

 

 ホームタウンの多くの人を幸せにするために「レッズが勝利すること・優勝すること」が、第一にすべきことであるのは間違いない。

 同時に、それを喜んでくれる人を増やしていくことにも、クラブが心を砕いていかなくてはならない。どれだけ良い記事を書いても、それが100人、200人にしか読まれなければもったいないのと同じだ。放っておいてもレッズに人気が集まる時代ではないのだから。

 

 オフィシャルサイトをはじめ、クラブ発信のメディアは少なくない。MDPもその一つで、ファン・サポーター向けに、エンタテインメントも含めた情報を早く、正確に発信していくことは非常に重要だ。

 それと同じくらい、ファン・サポーター以外の人たちにレッズの情報をどう受け取ってもらうかは、クラブスタッフが熟慮しなくてはいけないことだ。それは「5万人の埼スタで勝利した瞬間の光景」に満足しているだけでは、なかなか浮かんでこないかもしれない。

 

 そういう意味で、2月11日にレッズが開催した「REDS START 2025~大決起集会~」は画期的なイベントだった。

 場所が浦和駅東口、浦和PARCO前の市民広場。浦和駅利用者やPARCO来店者が行き交うエリアだ。これまでレッズが試合以外で直接ファン・サポーターと触れ合う機会としては、ファン感謝イベント「レッズフェスタ」があったが、駒場スタジアムやさいたまスーパーアリーナなど、それを目的に来場する人を対象としたイベントであり、それもコロナ禍以降、開催されていない。

 レッズに特別に興味のない人たちの目に触れ、立ち寄れる形のイベントは、20171220日(水)に同じ場所でACL優勝報告会を行って以来だ。

 

 この日、午前中はファミリーで参加できるスポーツ系のイベントで、何組かの親子に話を聞くことができた。多くは昨年2~6回ぐらい試合に行ったという人たちで(「ほとんど勝ってない」と言われるのが心苦しかった)、中には「今季はシーズンチケットを買った」という家族や、「開幕の神戸戦に行くから」とみんなで新ユニフォームをそろえた家族もいた。

 その中で「ICONサッカー」に参加した子どもの父親は「図書館(PARCO8階)に行こうと思ったら、こんなイベントをやっていて、子どもがボールを蹴りたい、というので参加した」「レッズは認知していたが試合に行ったことはない」と語ってくれた。

 今回、まったく試合に来たことがない家族がどれくらいいたかはわからないが、上記の父子は浦和に引っ越してまだ半年だそうで「毎年Jリーグ開幕前にこういうイベントをやっているものだと思った」と言っていた。ここは重要な感想ではないかと思う。

 またレッズファンの家族たちも「こういうイベントはうれしい。もっとたくさん機会があれば」「埼スタよりアクセスが良いので来やすい」と語っていた。

 

そのに続く   

午前中は「サッカーダーツ」「ICONサッカー」「モザイクアート写真撮影」の3つのコーナーがあった

レディアファミリーもフル出勤

 

(文:清尾 淳)