Weps うち明け話 文:清尾 淳

#963

当たったリーグ戦初起用(真っ赤な3週間・その3)

 仙台戦でリーグ戦今季初勝利を挙げた大槻監督は、続くアウェイ神戸戦で今季フィールドプレーヤーでは唯一リーグ戦全試合に先発フル出場を続けていた槙野をメンバーから外し、岩波を3バックの中央で起用した。

 3月下旬の中断期には代表招集でオフがなかった槙野の疲労を考慮してのことだったが、古巣との対戦に意欲を燃やす岩波の動きが練習で良かったから、ということもあった。岩波はレッズに移籍した今季、ルヴァンカップでは先発フル出場していたが、リーグ戦では開幕からベンチを温め続け、仙台戦ではメンバー外だった。

 神戸は単に古巣というだけでなく、自分が生まれたまちの、中学生時代から10年以上所属したクラブ。レッズへの移籍にあたっては相当な覚悟があったはずだし、ノエビアスタジアムで赤いユニフォームを着て躍動する姿を、家族にも、友人にも、ヴィッセル関係者にも見てもらうこと、それを岩波が一つの目標にしていたことは間違いないだろう。

「(ノエスタで)レッズとやるときは、相手のサポーターの応援がふだんより大きいので、負けたくないという気持ちが強くなった」。それがノエスタでのリーグ戦で神戸がレッズに対して強かった要因かもしれない、と岩波は語っていたが、そのノエスタでレッズの選手として、そして今季初めてリーグ戦でプレーするとき、どういうことが起きるのか。それがメンバー表を見てから、一番の楽しみになった。


 またレッズが前半に先制した。しかし追加点が取れないまま、後半6分に同点に追いつかれ、さらに18分、勝ち越された。リーグ戦7試合目で先制したのは4回目だったが、後半逆転負けした広島戦、磐田戦と同じ嫌な流れだった。

 しかし、そこからが違った。後半28分に右CKから試合を再び振り出しに戻したのは、神戸サポーターからときどきブーイングも受けていた岩波だった。

「神戸はCKのときファーサイドの相手をフリーにしてしまうところがあった」

 半年前までは自分たちが改善すべき課題だったことを逆手に取り、ファーに陣取った岩波が頭で合わせたボールはGKの手を越えて逆サイドのネットに吸い込まれた。

 逆転されてから追いついたのは今季初。大きな改善だが、勢いはそれだけにとどまらなかった。後半アディショナルタイム、今度は左CKからマウリシオがヘディングシュートを決めて再逆転。2失点を挽回するDF陣の活躍で今季初の連勝を果たした。とりわけ今にして思えば、正確なロングフィードで攻撃にも寄与した岩波の起用が、勝利へのキーポイントだったと思わずにいられない。

(2018年6月25日)

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