Weps うち明け話 文:清尾 淳

#967

災害に対応する意識を新たに

 新潟県中越地震が起きた2004年10月23日は、Jリーグ第2ステージ第10節が行われた日で、レッズはカシマスタジアムで鹿島アントラーズと対戦し、ちょうど試合が終わって場内の興奮がまだ静まっていなかったときだったが、揺れは感じた。震源地が新潟と聞いて、アルビレックスの試合はどうなのだろうと調べたら、この節はアウェイのジュビロ磐田戦で、しかも試合は翌日だった。


 1995年の阪神淡路大震災以降、冒頭の中越地震、東日本大震災、熊本地震、今年6月の大阪北部地震、そして北海道胆振東部地震と名付けられた9月6日など、大きな被害をもたらした地震が何度も発生している。

 東日本大震災などは、Jリーグ第2節の前日であり、発生が1日ずれていたら、試合中にあの揺れに遭遇したサッカーファン・サポーターが何万人もいたはずであり、そう思うとゾッとする。3.11以降、地震に対する我々の心構えは、それ以前とは比べものにならないほど強くなっているが、当時は現実にはもちろん想像の中でも「未体験」だったはずで、どんな混乱が起きていたか。


 Jリーグに関わっている者として、これまで試合が大きな揺れに見舞われなかったのは、偶然であり、幸いだったというしかない。そして今後、どこかの試合中に地震が起きない保障は全くない。

 レッズもこれまで関係者による非難訓練などをやっているはずだが、観客がいる中での訓練はない。地震発生時の注意は場内アナウンスされているし、MDPにも載せているが、毎回同じであり、多くの人はスルーしているかもしれない。そして「災害は忘れたころにやってくる」ものだ。ちなみに飛行機に乗ったとき、緊急時の行動についての案内が必ずある。僕も昔はかなり真剣に自分の中でシミュレートしながら見聞きしていたが、もうすっかりわかったつもりになって、最近は本を読んでいたりして聞き流してしまっている。


 これを機会に、というと被害に遭った北海道の方々には申し訳ない言い方になってしまうが、試合時の緊急事態発生に備えて各クラブが対応を新たにするときではないだろうか。

 たとえば、場内アナウンスの内容を変える。

 先に挙げた飛行機の案内のようなビデオを作って、大型ビジョンで流す。

 避難経路のサインを新しくする。

 地震の場合、まずはその場で動かないことが大事なのなら、その旨を前の席の背もたれなどに書いておく。


 可能なら、試合のない日に希望者にスタジアムに来てもらい、実際に避難訓練をする。何かイベントと合わせれば集まるモチベーションになるかもしれない。

 そして係員による防災対策の頻度を上げる。


 おそらくJリーグが再開する第26節では、各スタジアムで黙祷が行われることだろう。

 亡くなった方々への追悼の思い、そして今なお不自由な生活を余儀なくされている方々へのお見舞いの気持ちが、みんなの胸に深く刻まれているうちに、何かアクションが欲しい。

(2018年9月13日)

  • BACK
 
ページトップへ