Weps うち明け話 文:清尾 淳

#971

人事を尽くさないと何も起こらない

 前節(第31節)、11月3日(土)のG大阪戦に敗れ、その後6日(火)に行われた今節の前倒し開催分で鹿島が勝ったため、レッズが来季のACL出場権を得るリーグ3位になるのはかなり厳しくなった。明日の札幌戦でレッズが勝っても3位の鹿島との差は4だから、ラスト2試合でレッズが2勝、鹿島が2分け以下でないと逆転しない。さらに現在4位の札幌、同5位のF東京とも直接対決で勝つだけでは逆転できないから、相当数の「他力」が必要となる。


「人事を尽くして天命を待つ」とは、人間がやるべきことをすべてやり尽くした上で、あとは天に任せる、というような意味で、今回の場合「天」は他力であり、運と言い換えてもいい。もっともな格言だが、全力を尽くしてやることをやっても望む結果が得られるかどうかわからない、という状況の中で「人事を尽くす」ことが一番難しいと思う。「どうせ無理」「頑張っても無駄」「そんなに幸運が重なるはずがない」という気持ちが少しでもあると、「火事場の馬鹿力」が出ないどころか、ふだんの力も出せなくなってしまうのが人間だからだ。


 だが思い出すのは2014年の最終節。その前の鳥栖戦でアディショナルタイムに追いつかれレッズはリーグ首位の座をG大阪に奪われた。最終節でG大阪が勝てば、レッズが勝っても優勝はない。もしもレッズが追い上げてそういう状況まで持ってきたとしたら、モチベーションは十分だろう。しかし逆転された後に、そういうメンタルを維持することは簡単ではない。しかもG大阪の最終節の相手は、すでに降格を決めている徳島。十中八九、G大阪が勝つだろう。そういう空気が最終節の埼スタに濃くあったことは否めない。

 レッズは最終節の名古屋戦で先制したものの逆転負けした。試合が終わって、G大阪が徳島とスコアレスドローだったときの衝撃、後悔はとてつもなく大きかった。もし、初めからそれがわかっていたら、レッズは名古屋に勝っていた、とは言えないが、少なくとも試合に臨む姿勢はだいぶ違っていたのではないか。あのときのレッズは「天命」を信じておらず、「人事を尽くして」いなかった。せっかく勝利の女神がレッズに微笑んでいたのに、自らそれを無駄にしてしまったのだった。


 たった4年前の出来事。それを思い出せば、今の時点でレッズが最もやってはいけないことは、鹿島戦の前に持っていたモチベーションを下げることだ。

 さらに3位が駄目でも4位になっておくことは来季のACL出場にとって非常に重要だ。鹿島がリーグ3位で終わったとして、レッズが万一12月の天皇杯の準決勝で鹿島に敗れても、その後鹿島が天皇杯で優勝した場合、繰り上がりでレッズにACL出場権が来る。

 天皇杯でレッズが負けると思っているわけではないが、来季のACL出場という目標を達成するために、できることはすべてやっておくべきで、そういう意味でも、繰り返しになるが残り3試合がすべて決勝並みに重要なことには変わりがない。明日の札幌戦はそういう試合だ。


 6日に鹿島が勝ったことで、すでにリーグ戦が消化試合で天皇杯に向けた準備のような考えになっている人がいるかもしれない。悪い方に考えておくことは後のがっかり感を軽減するための方策ではあるが、そういう考え方をしても何の得もない。そもそもチームがそんな姿勢で試合をこなして行って、天皇杯で優勝するための勢いがつくものだろうか。


 メディアを含めた周りの雰囲気は選手に伝染するものだ。

 だから「絶対にあきらめないモード」を堅持しようと思う。勝利のメンタリティーとは、勝っているときに「絶対勝てる」と思うことだけではない。厳しい状況の中でも、それをなくさない心構えこそ、勝利のメンタリティーが定着する土壌だと思うのだ。

(2018年11月9日)

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