Weps うち明け話 文:清尾 淳

#977

2018年その2・終わり良ければ全て良し

 今季の浦和レッズを振り返る、その2は、僕が思いついた十大ニュース(13個あるってば)のうち、「フィールドプレーヤー全員がリーグ戦で先発」「天皇杯3度目の優勝で来季のACL出場権獲得」をまとめて考えてみる。


 今年は12月9日という早い時期に国内のサッカーが全部終わったのだが、とにかく最後まで公式戦があったというのは幸せだし、その最後の試合、決勝で勝って天皇杯3度目の優勝を飾ったというのは素晴らしいことだ。ちなみに多くのメディアが言う「レッズが天皇杯7度目の優勝」という感覚にはどうも馴染めない。これはいつか書きたい。


「終わり良ければ全て良し」という言葉がある。

 いつのシーズンでも、天皇杯優勝は「終わり良ければ」と言うのにふさわしい出来事である。だが、だからと言って常に「全て良し」と続けていいものなのかどうか。

 この言葉は「物事においては結果が最も重要であり、過程は重要視されない」という意味だとされる。

 天皇杯の大会自体はノックアウト方式なので、決勝までのどの試合も、たとえ内容が悪かろうと結果は勝利で終わっている。極端な話、押されに押されて守りきり0-0の末PK勝ち、の連続でも、優勝できれば「終わり良ければすべて良し」という表現がふさわしい。

 だがシーズン全体を見ると、リーグ戦の結果がひどいありさまで天皇杯だけ何故か勝ち抜けた、という場合がないでもない。J2降格が決まったチームが決勝に進んだことや優勝した例はある。そんなときに、この言葉は使いづらい。


 では今季のレッズはどうか。

 監督が途中で替わるというのは大きなダメージだし、リーグ戦で一度も優勝争いに顔を出さず、ルヴァンカップでもベスト8に進めなかった。その部分では周りの期待に応えられていない。リーグ戦5位というのは、監督の途中交代があった中では最高の順位だが、それでは目標の一つだったACL出場権を得ていない。結果で見ると天皇杯の優勝で「終わり良ければすべて良し」とは言いづらい部分がある。


 だが、こう思うのだ。

 今季のレッズは、終わり「だけ」良かったわけではない。中断期間のキャンプを経て、いろいろな部分が強化されていった。試合終盤になっても総力が落ちなくなったこと。先制されても逆転する試合、追いつかれても勝ち越す試合が多くなってきたこと。ゴール前で打てるときには打つことが増えてきたこと。セットプレーからの攻防がどちらも改善されてきたこと。何より勝利にこだわるようになってきたこと。

 リーグ戦では「ファイブ・ファイナルズ」を○●○●○の3勝2敗で、行きつ戻りつしたが、総じて右肩上がりで終盤を戦ってきた。特に最終節で今季リーグ初先発を3人(李、柴戸、荻原)、7か月ぶり先発を1人(ナバウト)と大きくメンバーを替えても勝ったこと。いや、得点に絡む場面を思い出せば、メンバーを替えたからこそ勝った、とも言えるか。あの勝利はチーム全体の底上げが成功していることを表わしているように思う。決して「東京に負けない神通力」だけで勝ったわけではないのだ。


 その流れのまま、天皇杯の準決勝、決勝を迎えた。あの2試合は、サポーターの力が最大限引き出されたという別の要素もあったが、ゴールの形や先制点を守り切ったことなどの内容を見れば今季の集大成と言っていい。

 チームが向上してきた流れにサポーターの力が加わった優勝。必然だった、とは言い過ぎかもしれないが、決して意外な帰結ではない。


 だから、この言葉を組み替えて「(シーズン後半は)ほぼ全て良かったから終わり良し」というのが今季は当たっているかもしれない。

(2018年12月21日)

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