Weps うち明け話 文:清尾 淳

#980

成功体験で苦しさを乗り越える

「今回のキャンプは昨年の中断期間に行った静岡キャンプよりもハードになりますか?」

「もちろんです」


 今季の指導後、オリヴェイラ監督と話す機会があったので、1月22日(火)からの沖縄トレーニングキャンプについて聞いた僕の質問と監督の答え。

 何の違和感もない会話のようだが、去年の静岡キャンプを取材に行ったメディアと体験した選手たちは「やっぱり…」とつぶやくだろう。メディアはある種の期待を込めて、選手たちは少しの(あるいは相当の)憂鬱さを秘めて。


 昨年、5月までのレッズと7月からのレッズは、違うチームのようだった。

 特にリーグ戦未勝利だった5試合を見ると、開幕のF東京戦は先制され追い付いたがそこまで、第2節の広島戦は先制したが逆転負け、第3節の長崎戦も先制され追いついたが勝ち越せず、第4節の横浜FM戦は拮抗した展開だったが後半に失点して敗れ、第5節のアウェイ磐田戦は先制したが前半のうちに追いつかれ、後半決勝点を決められた。

 それぞれ展開は違うが、共通していたのは終盤になると運動量がかなり落ちることだった。広島戦、横浜FM戦、磐田戦はいずれもその時間帯(後半34分、36分、36分)に決勝点を奪われている。

 その後、大槻暫定監督の下、意地の3連勝を挙げたが体力不足が改善されたわけではなく、オリヴェイラ監督が就任してからも、その弱点は継続していた。


 ワールドカップ期間中に行われたキャンプが明けてからのチームは、かなりの変貌を見せた。僕が挙げたいのは「試合の最後まで走りきれるようになった」「セットプレーでの得失点が改善された」「FW以外の選手のシュートが増え、それが決まるようになった」の3点だ。いずれも練習を見ている者にとって、その成果が面白いように表われた。

 セットプレーとシュートは意識付けの部分も大きいだろうが、体力についてはそれだけでは不可能だ。ワールドカップ前の大原での練習を含め、連戦中には見られなかったハードなトレーニングがなければあり得なかった改善だろう。天皇杯の準決勝、決勝はいずれもセットプレーからFW以外の選手が点を取って勝った。それも先ほど挙げた改善点に沿ったものだが、前半挙げた1点を最後まで守り切るというのは、シーズン序盤では考えられなかった。


 あの静岡キャンプで行われたトレーニングより、さらにハードなものが待っている。そうでなければシーズンの最初から最後まで戦えないし、JリーグとACLの2冠を狙うことはできないだろう。選手たちもそれを目指しているから、ハードなメニューにときどきうんざりするかもしれないが、真剣に取り組むだろう。その苦しさの後に何が待っているか、昨年成功体験を得ているのだから。


 まずは29日(火)までの8日間。「俺は選手でなくて良かった」と感じるだろうか。

(2019年1月21日)

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