Weps うち明け話 文:清尾 淳

#989

広州恒大戦から

 10月23日、広州恒大に勝利したあとの囲み取材で興梠慎三は、「(アジアの他国より)Jリーグの方が、守備がしっかりしていて、マークもしっかりついてくる」という意味のことを言った。ACLで多くの点が取れていることについて聞かれたときの答えだが、その問いの裏にある「(Jリーグでレッズは残留争いを抜けていないが)」という意図を感じ取ったのかもしれない。先にJリーグで得点する難しさを答え、「それに比べると中国のチームは」という答え方をした。たしかに、あのヘディングの得点シーンで、2人いた広州のDFのうち1人は完全に興梠から目を離していた。Jのクラブがあんな守備をしていてくれたら、レッズの順位はもっと上だったろう。あ、でも他チームも同じか。

中国代表と日本代表の成績を比べればうなずける、と言うと乱暴すぎるだろうか。中国のチームを相手にするとき、強力な外国籍攻撃陣のアタックをしのげば、点は取れるから何とか勝てる、というのが実感としてある。もちろん「~しのげば」というのが簡単ではない。ACLに慣れていないと、広州や、上海上港、北京国安ら中国リーグのトップ3に抑えて決勝に進むのは難しいだろう。

 興梠はJリーグのDFの質の高さについて語ったが、それはFWにも言えると思う。
 中国の強豪クラブは助っ人外国籍選手を攻撃サイドに入れているが、その選手たちが守備のカバーのために走るシーンは何度あるだろう。ボールをもらいに下がるとか、ドリブルで持ち上がる相手DFを追う、というのではない。守備機会があるかどうかわからない、カバーリングのためのプレーだ。

 広州戦の前半34分ごろだった。
 GKの西川がロングフィードを送り、左ワイドの関根が相手ゴール前に走るという、レッズの攻撃パターンが見られた。ややボールが長く、相手GKにキャッチされたのだが、そのとき関根のポジションを埋めるため、自陣左サイドを全力で走る興梠の姿があった。
 GKからそちらにボールが送られたわけではない。可能性を予測してのカバーリングだ。その後に広州は右サイドの選手がゴール前に迫ったが、興梠がしっかりついていてクロスを入れさせなかった。

 全力でゴール前まで走った後の関根が自分のポジションに戻ったのでは間に合わなかったかもしれない。興梠の献身的なプレーがピンチを一つ救ったと思う。
 そのプレーについて興梠に聞くと
「時と場合によるよ」としていたが、「日本選手の質が高いのはDFだけでなくFWもでしょ」と言うと、まんざらでもない表情だった。

さて、質の高いDFがいる相手が続くJリーグ3連戦が始まる。

(2019年10月28日)

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